文科省科学研究費基盤研究(B)
「循環型情報社会の創出を目指した協働的メディア・リテラシーの実践と理論に関する研究」


文科省科学研究費基盤研究(B)
「循環型情報社会の創出を目指した協働的メディア・リテラシーの実践と理論に関する研究」

この科研費研究は、実質的にはメルプロジェクトの活動推進のための財政的基盤として取得した。民放連プロジェクト、博物館アウトリーチ、本づくりとメディアリテラシー、d'CATCH、Media Teachers Villageなど、多くのサブプロジェクトの実施支援のほか、公開研究会、シンポジウムの開催、報告書や書籍の刊行がこの科研費によって進められている。

■概要

2002−2004年度、総額1150万円
研究代表者:水越伸
研究分担者:菅谷明子、砂川浩慶、山内祐平

■目的

この研究は、メディア事業者と学校教育領域、および社会教育領域という、これまで相互にほとんど関わりを持たなかった社会セクターの間で、たがいに学び合う協働的なメディア・リテラシーの実践を試行し、それらの知見をもとにメディアに関わる多様な人々や社会組織が循環性を持つ地域的な情報社会を創出していくための現実的なシステムを生み出すことを目的としている。具体的な地域社会の中で、メディア・リテラシーの実践を通じて、メディアの送り手と受け手、学校と一般社会、学校教育と社会教育の間に循環性を恢復する実践を多角的に行い、公共的コミュニケーションを活性化するメディア実践のあり方を理論化し、広く一般に公開する。一連の成果を踏まえ、以後に本格的なメディア・リテラシー活動の普及を展開していく予定である。

■学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義

  1. 日本におけるメディア・リテラシーの諸研究は未だ草創期あり、学校教育の枠組みの中での諸実践や教材開発、あるいは欧米の市民運動、NPO活動の実践報告などが中心的な成果であった。しかし前者は、学校教育の枠組みの内部にとどまるか、メディアの技術的開発に焦点を置いたものであり、後者は現状報告の域を出ないものが多かった。この研究は、メディア・リテラシーという概念を、社会科学的なメディア論、コミュニケーション論の中で位置づけ、新たな情報社会における公共的コミュニケーションにとって不可欠なメディア使用/受容/表現活動としてとらえなおしている。すなわちメディア・リテラシーを起点として、メディアの受け手個人の能力育成にとどまらず、循環型の情報社会、地域共同体を再生、その中で生きる人々の自己実現、アイデンティティの恢復などを、現実的に進めるプログラムを生み出すことを目的としている。このような企図に基づくメディア・リテラシー研究は、内外を問わずほとんど見あたらない。
  2. 学校教育と社会教育(公民館、文化センター、図書館、博物館などを含む)を、地域社会の中で公共的コミュニケーション空間を維持、発展させる文化装置として総合的にとらえ、その中で市民とメディア事業者と言う異なる社会セクターを連携させ、「学びの共同体」を生み出そうとする実践研究は、日本においては部分的実践が散見されるだけである。
     また本研究は、テレビやコンピュータと言った特定のメディアに片寄るのではなく、メディア論的な背景から総合的にメディアをとらえ、多様な実践を試み、個別メディアの特性と、メディア一般の特性を浮き彫りにすることを目的としている。このような研究は、英米系諸国には散見されるものの、十分にメディア論の思想、理論が援用されて来たとは言い難い。
  3. 3年間の実践研究を行なうことで、協働的なメディア・リテラシーについての現実的で一般的な理論枠組みを構築し、その知見を書籍、ウェブサイト、講習会、シンポジウムなどを通じて広く一般に公開していく。同時にメディア事業者の業界団体、研究機関や、学校教育、社会教育の関連諸機関に対し、新たな情報社会を自律的で循環性のあるものにデザインしていくためのメディア・リテラシー教育のあり方について、現実的政策提言を行なっていく。