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メルプロジェクト・メールマガジン
「メルの環」2004年5月号

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3日ほどまえ、東京では冷たい暴風雨が吹き荒れました。春の浮遊感にも
そろそろ終止符を打たねばならぬころ、と思ってはいたものの、こうやら
れては調子が狂ってしまいます。いよいよ連休を迎えましたが、みなさま
いかがお過ごしでいらっしゃいますか。
今月は、公開研究会やシンポジウム後日談のほか、イラク人質事件発生時
のコメントなどをお届けします。長文失礼の号となりましたが、まずはお
読みいただいて……よい連休をお過ごしください。(編集担当)



では、今月号の内容です。


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               ■ 目次 ■ 
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MELL Project News
■1■[メルプロジェクト] 5/15 5月公開研究会のご案内

■2■[メルプロジェクト] 4月公開研究会がひらかれました

■3■[メルプロジェクト]「メディア・バザール」出店者からの成果報告


Other Information
■4■ またひとつ、市民チャンネルの動き!
      〜〜福岡市の地域番組が7月に開局
■5■ 地域づくりだ図書館だ
      〜〜5月のイベントのご案内
■6■ 「イラクの日本人誘拐」に際して



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               ■ 本文 ■ 

MELL Project News
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■1■[メルプロジェクト] 5/15 5月公開研究会のご案内

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5月の公開研究会は下記の要領で15日に開催いたします。今回は、2年前に
おこなわれた全国4地区での実践が実を結び、第二期が始められることになっ
た「民放連メディアリテラシー・プロジェクト」をとりあげます。前向きな
議論の場とするためにも、多くの方々のご参加をお待ちしています。なお、
今回はいつもと開催場所が異なり、旧・社会情報研究所/現・情報学環建物
にておこないます。どうぞご留意ください。メルプロジェクトの公開研究会
は事前登録・参加費は不要です。


       メルプロジェクト5月公開研究会
   「送り手と受け手の対話の場をデザインする:
              第二期民放連プロジェクト構想」
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○日 時 5月15日(土)午後3:00〜5:30
○場 所 東京大学本郷キャンパス
     情報学環(旧・社会情報研究所)6階会議室
     ※いつもと開催場所が異なります!
      <http://www.isics.u-tokyo.ac.jp/>ページの左中央部の
      「アクセス」から地図をご参照下さい
○概 要
 2001~02年度にローカル民放と子どもたちを結んで実施された「民
放連メディアリテラシー・プロジェクト」。メルプロジェクトが(社)
日本民間放送連盟の研究委託を受けて進めたこのプロジェクトのポイン
トは、表現からアプローチすること、送り手と受けての循環性を生み出
すことにありました。その成果はシンポジウムや報告書で公表され、私
たちが思っていた以上の好評を持って受け入れられました。
 さて、この民放連プロジェクトの第二期がはじまります。メルプロジェ
クトでは第一期の成果をふまえつつ、新たな展開の方向を模索している
ところです。今期のポイントは「送り手と受け手の対話の場をデザイン
する」――5月の公開研究会は、この新プロジェクトの構想を、民放連、
民放関係者からのアドバイスをふまえつつ発表し、みなさんとともに議
論していく場といたします。(水越伸:メルプロジェクト・リーダー)



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■2■[メルプロジェクト] 4月公開研究会がひらかれました

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当日は初夏の陽気にめぐまれ、4月公開研究会は60人以上の参加者を
集めておこなわれました。ご参加いただいたみなさま、たいへんあり
がとうございました。「ケータイ」をめぐる構想計画の発表とそれに
つづく活発な意見交換がおこなわれ、また会場にいらした安斎利洋・
中村理恵子両氏にもご登壇いただくなど、実りある会となりました。
ここで報告されたメルプロジェクトの「ケータイ計画」は、おって経
過をご報告していきます。こちらもどうぞご期待ください。


  2004年4月メルプロジェクト公開研究会

○ 日 時  4月17日(土)午後3:00〜6:00
○ 場 所  東京大学本郷キャンパス 
       大学院情報学環暫定建物二階会議室
○ 参加者  約65名
○ テーマ  「ケータイにアプローチする!」
○ 登壇者  山内祐平(東京大学大学院情報学環・助教授)
       水越伸(東京大学大学院情報学環・助教授)
○  概 要
 ーケータイは妖怪メディア化しているー。携帯電話の教育的利用、
教材・システム開発をめぐるプロジェクトの構想を報告した山内祐平
氏は、現在の携帯電話の様相をこう表現した。機能ばかりがあって社
会には溶け込んでいない、まさに妖怪化しているケータイをめぐって
これから何ができるのだろうか。出席者全員で、今まさに手の中にあ
るケータイを改めて見つめなおしながらの議論となった。
 報告では、まず山内祐平氏がベネッセ寄附講座における研究可能性
を紹介。さらに、1. 共同体を志向する(共同体を生み出すための携帯)
2. 活動を志向する 3. アートを志向する、という研究の基盤となる
べき3つの志向性を提案した。一方、水越伸氏は、ケータイを社会文
化的にみていく必要性を図をもって示唆し、さらにNTTドコモ・モバ
イル社会研究所の委託研究における構想として「ケータイのリテラシ
ー・デザイン」「ケータイの社会文化論」という2つの研究の柱を紹
介した。
 以上の報告を踏まえ、参加者からは具体的な体験が報告されるとと
もに、プロジェクトの重要な視点となる多くの指摘が出された。以下
はそのいくつかである。
・新しい公共圏をつくっていくためにケータイで何ができるだろうか?
・ユーザー側の立場にたたず、メーカー側が力技で実現してきた技術
がいくつかある。(NTTドコモの方からの意見)
・ケータイをつかわせようとする画策(電車の社内広告にURLやメー
ルアドレスを記載する、など)が身近にあふれている。
・ケータイのメール機能は耳の不自由な人にとっては非常に便利な
ツールである。一方、ケータイがふえ公衆電話が減ったことに高齢者
などは困っている。ケータイを五体満足的な視点に固定してはいけな
いのでは?
・待ち受け画面の画像は圧倒的にペットの写真が多いのはなぜ?
 さらにゲストとしてアーティストの安斎利洋・中村理恵子両氏が
、「連画」プロジェクトを紹介(詳細はぜひ http://www.renga.com/ 
までアクセスを!)。拡散化してばらばらになりがちな知をどうエラ
ボレーションしていけるか、ということをテーマに展開するこのプロ
ジェクトを、ケータイと結び付けていくことはできないかと提案した。
 短い時間であったが、出された提案と指摘はいずれも現在の認識を
乗り越えた新しいケータイの見方を模索するうえで、興味深いものば
かりであった。「ケータイだけど、ケータイに終わらない」(水越氏)
――ケータイの未来を切り開く研究の始まりに胸がはずんだのは、きっ
と私だけではないと思う。(林田真心子:東京大学大学院情報学環博
士課程、メルプロジェクトメンバー)



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■3■ 「メディア・バザール」出店者からの成果報告
           〜〜ジョリー君といくフィリピン料理食べ放題ツアー
           〜〜ワークショップ「魅力☆発見」実践決定!
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3月に行われたメルプロジェクト・シンポジウムから後日談をお届けします。
シンポジウム第2日目に開催された「メディア・バザール」は、メディアの
流通のあり方を考えるための実験的なワークショップでした。教材や出版物、
イベント企画など、多様なメディア表現を持ち込んだ出店者(売り手)にご
登場いただきましたが、そのひとつ、d'CATCH(=映像メディアにおける文
化的共生の可能性を探る国際共同研究プロジェクト)から提供されたイベン
ト企画が実行されました! また、武蔵野美術大学メディア・リテラシーチー
ムから提供されたメディア・リテラシーのワークショップ・プラン「魅力☆
発見〜どこから見るか伝えるか〜」も採用が決まり、8月22〜23日・山口
情報芸術センターでの実践に向けて準備が進められています。バザール当日
の会場では、物品の売買こそは活発におこなわれたものの、こうした企画や
プランの提供はその場では成果が目に見えません。こうしてご報告できるこ
とをうれしく思います。では、楽しい報告をどうぞ。

◆d'CATCH「われわれのなかのフィリピンを探そう」
 「メディア・バザール」で、私たちd'CATCHは「われわれのなかのフィリ
ピンを探そ う 〜ジョリー君といくフィリピン料理食べ放題ツアー〜」とい
う企画商品を提供させて頂きました。シンポジウム総括でもご報告したとお
り、当日の申込者数は16名。 売り上げも5万円を超えたのですが、実はツ
アーの最少催行人数を20名としていましたので、一旦はツアーの催行を中止
することにしました。ところが、お申し込み頂いた方々からの熱いラブコー
ル(?)もあって、去る4月2日(金)、総勢11名の参加者(主催者含む)
により、多少コースを変更した新たな企画でツアーを決行いたしました。
 「エスニック料理」と呼ばれるタイ料理やベトナム料理がすでに私たちの
食生活において目新しいものではなくなっている一方で、韓国・朝鮮、中国
などに次いで在日の数が多いにもかかわらず、なぜかフィリピンの料理や文
化はあまり私たちに馴染みがありません。そこで d'CATCHでは、メンバー
としてプロジェクトに参加してくれたフィリピンからの留学生ジョリーくん
(本名:ホセ・ルイス・ラクソンくん)の案内で、 フィリピン料理を体験し
てもらう企画を提案しました。フィリピン料理は、未知のものや馴染みのあ
るものが融合された「創造的」ともいえる料理であり、実際、私たち「日本
人」にはとても美味だったのですが、そこにはスペイン、日本、アメリカに
支配されてきた長い歴史や、中国大陸に近い地理的な背景があることを考え
ると納得がいきます。
 いつもは「食い意地」だけで食しているいろいろな国の料理も、当たり前
ですが、実は深〜い歴史があるのです。おいしい料理を食べながらそんなこ
とに思いを馳せてみるのも、また楽しいと思いませんか? 余談ですが、こ
の後、第二弾として、やはり在日人口の多いブラジル料理 「シュラスコ」を
食すツアーも行いました。「第三段は、香港料理!」と盛り上がり、さらに
ネットワークは広がっています。
 メディア・バザールを企画された PUBLICingのみなさま、楽しい機会を本
当にありがとうございました。来年も楽しみに しています!
(坂田邦子:東京大学大学院情報学環助手、d'CATCHメンバー)


◆武蔵野美術大学メディア・リテラシーチーム
「魅力☆発見〜どこから見るか伝えるか〜」
 このワークショップは、昨年度、武蔵野美術大学造形学部映像学科でメル
プロジェクト・リーダーの境真理子さんと共に担当させていただいた授業
「メディア・リテラシー論」の中で実践したものです。「あなたは○○から
PR用の□□制作を依頼されました」という設定のもと、参加者に、それぞ
れ与えられたテーマの「魅力」を発見してイメージ写真で伝えてもらう、
ロールプレイング型のワークショップです。ここでは、好き嫌いなど自分の
主観ではなく、意識的に他者の眼差しを取り込んで、戦略的に魅力を引き出
してもらいます。「誰に向けた・何のためのメッセージか」を明確にするこ
とで受け手を意識した表現を学ぶこと、またそのリフレクションから(テレ
ビや新聞など)他者が送り手となる際の意図に気付くことを目的としていま
す。メディアのしくみや政治・産業など社会的コンテクスト、「魅力」の多
様性について考えることもワークショップの狙いに含まれています。
 このワークショッププランをアピールすべく参加した「Media Bazaar!!」
では、学生たちといっしょに仮面舞踏会のようなアイマスクを着用し、カラ
フルなシールをペタペタと体中にはりつけ、人通りの多そうなコーナーに陣
取りました。学生たちはバザールの異様な熱気にあてられたのか、いつもの
クールな表情はどこへやら、周りのバザーリ(出店者)に負けぬよう声をか
らして売り込みに精を出してくれ、関心を持ってくださる博物館や教育関係
者の方々と出会うことができました。
 そしてYCAM(山口情報芸術センター)の市民委員・井上史子様より、シ
ンポジウム終了後にあらためてお話をいただいて、今回の嬉しい企画が実現
することとなったのです。2004年8月22・23日には学生と共に同センター
を訪れ、「YCAM子ども情報局」の小中学生のみなさんと、ワークショップ
に取り組む予定です。さてどんな「魅力」が発見されるのか、とても楽しみ
です。
 この「魅力☆発見」は武蔵野美術大学での授業のために作ったものであり、
もちろん教科書にも載っていませんし、今回のことがなければ、みなさんに
知っていただく機会はなかったかもしれません。日本中、アジア中、そして
世界中に、バザールの掘り出し物となるものがごろごろしているさまを想像
すると、メディア・バザールという、怪しくも新たな出会いの場(?)の可
能性は測りしれないのだと思います。もちろんそれが、メディア・リテラ
シーの営みやメディア表現をより豊かなものとしてくれるであろうことは言
うまでもありません。(土屋祐子:メルプロジェクト・メンバー)



Other Information
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■4■ またひとつ、市民チャンネルの動き!
                〜〜福岡市の地域番組が7月に開局
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福岡からあたらしいニュースが飛び込んできました! 九州・福岡市にいよ
いよ市民チャンネルが開局されます。

この市民チャンネルは、地域住民が企画・制作した映像作品を流す「市民が
主体的に情報発信できる地域番組」として、7月からの放送開始が予定され
ています。番組は市が出資するケーブルテレビ会社「福岡ケーブルネットワー
ク」で放映され、市内の全所帯の約70パーセントで視聴できるのだとか。
福岡市によれば、ケーブルテレビで地域住民自らの企画・制作によるこうし
た番組を流すのは、政令指定都市では初めてだそうです。メルプロジェクト
にも準備にいそしむ関係者の声が届けられており、私たちも開局を楽しみに
しています。成功を祈ります!



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■5■ 地域づくりだ図書館だ
          〜〜5月のイベントのご案内
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緑風さわやかなこの季節、とは行楽の誘い文句ですけれども、5月は行楽
のみならずさまざまな催しが予定されています。「地域づくり」と「図書
館」をテーマとしたイベントをご案内します。ご関心のある方はぜひ、お
運びください。


◆ 5/15 鳥取県地域づくりセミナー「今、地域づくりが面白い!」in 倉吉
◆ 5/29 「ディスカバー図書館2004」in 東京


         鳥取県地域づくりセミナー 第1回
          「今、地域づくりが面白い!」
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 □会 期  2004年 5月15日(土) 15:30〜
 □会 場  新日本海新聞社中部本社ホール
       倉吉市上井町1-156 電話:0858-26-8300
 □プログラム
   基調講演「さらなる地域づくりへ」宮崎暢俊氏(熊本県小国町町長)
   地域づくり交流会(17:30〜) 
 □参加費  4,000円(交流会参加者のみ) 
 □問合せ・申込先 鳥取県地域づくりセンター
          電話&FAX:0858-47-6500
 □申込期日 2004年5月7日まで
 次世代を担う人材の発掘と育成、および先進事例の学習と交流によって
 活動の活性化を図ることを目的としたセミナーの第1回。地場産業の活
 用や「九州ツーリズム大学」の開校など、ハード・ソフト両面で先進的
 な施策を推進している熊本県小国町の宮崎町長を講師にお迎えします。
 地域づくりに関心のある方ならどなたでも参加できます。



          文部科学省/日本図書館協会
 「ディスカバー図書館2004 〜図書館をもっと身近に暮らしのなかに〜」
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 □会 期  2004年 5月29日(土) 13:30〜16:30
 □会 場  明治大学アカデミーコモンアカデミーホール
       東京都千代田区神田駿河台1-1
 □プログラム
   基調講演「知的立国を図書館から」片山善博(鳥取県知事)
   事例報告「進化するニューヨーク公共図書館」菅谷明子(ジャーナリスト)
   パネルディスカッション「地域の情報拠点としての図書館」
    片山善博(鳥取県知事) 児玉清(俳優) 本上まなみ(女優)
    常世田良(浦安市教育委員会) 糸賀雅児(慶應義塾大学教授)
 □問合せ・参加申込みについては下記ウェブサイトをご参照ください
 文部科学省が公共図書館をテーマに開催するシンポジウム。内外の図書館
 のユニークな実践が数多く報告されるほか、地域情報化、まちづくり、生
 涯教育、文化政策など様々なテーマを内在する催しと期待されます。当日
 の模様の一部は、後日NHK「土曜フォーラム」で放送される予定です。

□「ディスカバー図書館2004」
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/04/040402201.htm



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■6■ 「イラクの日本人誘拐」に際して
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イラクでの日本人誘拐事件は4月8日に起こりました。その直後の数日間は、
情報が入り乱れ、メディアも個々人もさまざまな対応をとり、事態は混乱を
きわめました。被害者の方々が解放されたのちもなお、新たな観点から複数
の議論がわき起こっています。
事件が報道されてからメルメンバーの間で交わされた意見の一部を紹介した
いと思います。これらは3人の方々が解放された15日以前に寄せられたもの
です。長文になりますが、ご関心のある方はお目通しいただければと思います。

           *  *  *  *
この数日間ほど市民、メディア、世論について考えずにいられない日はあり
ませんでした。被害者のご家族、多くの市民の声は、日本政府を飛び越え、
アルジャジーラに、イラクの市民に届けられました。一方で、これほど多く
の誹謗中傷や、自作自演説などの憶測がウェブに書き込まれていることに驚
きを隠せないでいます。
私の所属するインターネット市民メディアにもたくさんのご意見をお寄せい
ただき、急ぎ編集部からイラク市民に向けたメッセージをアラブ系メディア
に送りました。その掲載記事を読んだ海外の方々からメッセージをいただき、
国境を越えて、市民が手を取り合うことの大事さをかみしめています。彼ら
が無事解放され、この痛ましい事件が市民とメディアの新しい関係性を生み
出す契機になったと論じられる日が来ることを願って止みません。
           *  *  *  *
僕もこの数日、blogを中心にWebでこの事件がどのように語られるかをウォッ
チングし、時には実際にコメントやトラックバックをしてきました。本当に
疲れました。新しいメディアへの期待を打ち砕くように、そのメディアを利
用する人たちの「こころの貧しさ」(陳腐な表現ですが、これ以外の言葉を
思いつきません)を突きつけられ、絶望に近い気持ちに打ちひしがれていま
す。インターネットとはこのようなものだったのでしょうか?
           *  *  *  *
海外メディアのウェブサイトで、アルジャジーラに送り届けられたビデオで
日本のテレビメディアがカットした映像が収録されたものを見つけました。
これを日本のテレビが流さなかったのは妥当な判断だと思います。しかし国
家(とくに外務省とか)がほとんど役に立たず、衛星とインターネットとい
うメディアが大きな役割を果たして事態が進んでいる今、もっとメディアに
ついての吟味はなされてしかるべきだと思います。
たとえば上記のような映像がカットされたのはいいとして、しかしすべての
テレビ局が横並びでやってよいのか。仕方のないことだとしても、カットさ
れているという事実自体がほとんど視聴者に知らされないというのは健全な
のか。こうしたメタレベルの議論はどこにもない。
この事件をとりまくインターネットの状況については、先走りして言うと僕
たちは、このドロドロの情報社会のただなかにいるのであり、その絶望的な
状況から目をそらさずにいるしかないと思います。少なくとも自分がドロド
ロとは別のところにいるような知識人もどきのような勘違いをしたり、絶望
から逃れるために「右」や「左」へ逃げて楽になるということをしないよう
にすべきだと思います。そういう覚悟をした上で、しかし新しいメディアを
デザインし、コミュニケーションの回路を作っていくしかないでしょう。重
い悩みをかかえていないと、本当にプレイフルなことなどできません。
           *  *  *  *
金曜日のニュース23では、別のビデオがあることを説明し、その一部をなが
していました。ご指摘のように各ニュース番組がカットのうえ同じ場面ばか
りを流していただけに、かなりショッキングでした。たとえばアメリカのテ
レビは、惨殺されたユダヤ系アメリカ人の映像の扱いをめぐってかなり対応
が違ったようですが……
インターネットについては、事件の当事者のHPはあまりにひどい書き込みが
多くて閉ざされたと新聞で読みました。掲示板にしろ、何か事件がおきる度
にこうした現象はエスカレートしているのかもしれません。しかし、「100
人のなかで3人納得できる人がいたら希望はもてる」と人に言われて以来、
私はよく「あ、この人は3人のうちの一人だ」とうれしくなることがありま
す。もしかしたらインターネットのHPのほとんどは、どうしようもないのか
もしれない。でもそれを全部オミットしてしまうとやはり言論の自由は危機
にさらされる、ということなのでしょう。
”下世話”を飲み込んでおかないと、あのエログロナンセンスを排した戦前
のメディアになってしまう。むずかしいところですね。
           *  *  *  *
皆さんのメールを拝見し、みな同じようにいろいろ考えていらっしゃること
を知って心強く思いました。この数時間TVをつけながらネットを見てきまし
たが、ネットでは自衛隊撤退なければ人質殺害との記事が出ており、一方TV
ではどのチャンネルでもこのことには触れていませんでした。どの情報を信
じたらいいのか、欲しい情報が得られないときはどうしたらいいのか、情報
のこわさをひしひしと感じています。平和だと思い、情報があふれていると
思っていたことがもろい砂の城のように思えてきます。
           *  *  *  *
「自己責任」ということばがいかにも正当性をもって語られています。日曜
朝のソフトニュースなどでは、このことばがコメンテーターなどからも漏れ
ていました。ネットでも、この「自己責任」が「強い日本」と結びついて堂
々と使われ、撤退派を巻き込むほどに支持を得ているようにも見えます。
確かに「自己責任」の部分はあります。家族と本人とのずれもあるでしょう
し、普通の生活を送っている人にはそう見えるんだろうと思います。でも、
テレビやメディアで働く人間が、フリーのカメラマンまで「自己責任」扱い
してしまっていいのでしょうか。フリーカメラマン、フリーのジャーナリス
ト、ひいてはジャーナリストやメディアの重要性、役割が軽視されているこ
との表れだと憤慨する人は放送局内部にいないのでしょうか。ジャーナリス
トは、少なくともこのアメリカが起こした戦争の現実を見据える意味で、非
戦闘地域か戦闘地域かを見据える意味でも、民主主義国家に住む私たちの
「公共」の利益を担っているものだという説明やフォローが少なすぎるよう
に思いますし(マスメディアにそれを期待するのは無理かなあ)、多くに人々
にそのことが伝わっていないように思います。この説明がどこかであれば、
少しは反応も変わるのではないかという気がしています。蛇足ですが、もし
これが「毎日新聞の記者」や「日テレの記者」であったら、世の中はどう反
応したでしょう。
ここ数日、暗い気持ちですが、こちらの方では女子高校生が繁華街に座り込
み、ハート型シールを使って路上アンケートをしたり、イラク人医師がアル
ジャジーラに人質解放を訴えるビデオを送ったりと、「捨てたもんじゃない」
動きもたくさんあります。もうひとつ、私たちができることは、そういう試
みを支えてゆくことなんだろうと思っています。
           *  *  *  *






           (2004年5月号 おわり)
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             「メルの環」編集担当
   松井貴子(水越研究室アシスタント) 崔銀姫(北海道東海大学) 
   高宮由美子(NPO子ども文化コミュニティ)  山根かおり(pampam)
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         東京大学大学院情報学環「メルプロジェクト」
              <http://mell.jp/>
 プロジェクトリーダー
  市川克美(NHK番組制作局)    境真理子(日本科学未来館)
  菅谷明子(ジャーナリスト)    林直哉 (長野県立梓川高校)
  水越伸(東京大学大学院情報学環) 山内祐平(東京大学大学院情報学環)
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Media Expression, Learning and Literacy Project
on Interfaculty Initiative in Information Studies, The
University of Tokyo
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